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企業年金部会、個人退職勘定で年金部会と合同議論も視野に

2014-10-15

 厚生労働省に設置された社会保障審議会企業年金部会は2014年10月14日、東京・永田町の全国都市会館会議室で第10回の部会を開催した。テーマは、第9回から続く「企業年金の普及・拡大 一般企業向けの取り組みについて」、および、「ライフコースの多様化への対応について」。特に、「ライフコース多様化への対応について」では、「老後の向けた個人の自助努力の環境整備」の一環として、第3号被保険者、企業年金・公務員等共済加入者も活用できる新しいタイプの「個人型DC」、「個人退職勘定制度」という考え方を事務局(厚労省年金局)が提示。今後の議論については、「必要に応じて、年金部会との合同部会開催」の可能性も示唆された。(写真は、企業年金部会<第10回>の様子。正面の中央が部会長の山崎泰彦氏・神奈川県立保健福祉大学名誉教授)

 企業年金部会は、2013年10月29日に第1回の部会が開催され、当初は、2014年4月に施行された厚生年金基金の特例解散についての議論を展開。2014年6月から、企業年金制度について現状のヒアリングを経て課題を整理。9月からは、法改正が必要な事項等、優先的に議論すべき内容を中心に議論を開始。年内は税制が絡む課題を中心に、月2回程度の開催を原則として議論を進めている。

 9月以降の議論は、「柔軟で弾力的な制度を設計し、企業年金の普及・拡大を進める」という共通認識に立って、「中小企業向けの取り組み」「一般企業向けの取り組み」について論点を整理してきた。

企業年金の拠出限度額はDB・DC合計管理も選択肢

 第10回の部会で一般企業向けの取り組みとして議論されたのは、DB(確定給付企業年金)と、DC(確定拠出年金)の拠出枠の問題。現在、DBには拠出限度額が設定されていないことに対し、DCには拠出限度額の拡大が求められているため、「DB・DCの合計で限度額を設定し、労使の合意に基づく様々な設計を可能とする」という案が示されている。また、給付についてDCは60歳以降にしか認められていないものを、中途退職時の一時金など、中途引き出しの仕組みを導入できないか――という議論が行われた。また、「自由度が増せば、税制上の保護も受けにくくなっていく」ため、制度としてのバランスへの配慮も重要とされた。

 一方、第10回部会から始まった「ライフコースの多様化への対応」では、「人生の中で複数の会社を経験する者が増加するとともに、生涯の中で第3号被保険者の期間が短くなることが見込まれるなど、就労の有無も含めた就労形態の多様化が進んでいる」という環境認識のもと、「国民一人ひとりが、どのようなライフコースを選択しても、生涯を通じて老後に向けた継続的な個人の自助努力ができるように支援する必要がある」として、そのための必要な環境整備についての議論があった。

 そして、事務局では2013年1月に年金シニアプラン総合研究機構が示した「国民の老後保障に関する研究」の中にある「既に諸外国でも導入されている個人の自助努力による“個人退職勘定制度”を参考に、同制度をわが国へ導入する可能性を探る」という点も、「オプション」として話題にあげた。その上で、事務局が具体的に提示したのは、「個人型DCの加入可能範囲のあり方」、「DCマッチング拠出等のあり方」、「制度間のポータビリティのあり方」という論点。

厚生年金の所得代替率は2050年に50%割れも

 この論点の前提にあるのは、公的年金は支給開始年齢の引き上げ、中長期的な給付水準の調整によって、現在は老後の生活資金の中心に位置づけられている公的年金が徐々に給付水準を切り下げていくという見通し。今回、資料として示された「標準的な厚生年金の所得代替率の将来見通し(平成26年財政検証)」によると、2014年度の所得代替率62.7%(夫婦の年金額:21.8万円)が、仮に機械的に給付水準調整を続けた場合、2030年度には所得代替率が57.2%~53.8%に低下し、2050年度には51.0%~41.6%と、所得代替率が50%以下になる可能性が示されている。

 このため、公的年金を補完する仕組みとして、企業年金の普及・拡大が期待されているが、実際には企業年金実施割合は減少し、非正規雇用労働者の増加によって企業年金に加入できない人が増えているという現実がある。このため、企業年金部会では企業年金の普及・拡大につながる施策を議論しているところだが、「ライフコースの多様化への対応」に議論が及ぶと、企業年金の制度が利用できない人々への対応も議論の対象として避けて通れなくなった。この点には委員の間からも「企業年金部会で議論を進めて良いものか?」という疑問の声も出た。

 ただ、企業年金について公的年金を補完する私的年金のひとつとして議論し、かつ、「個人型DC」、「DCへのマッチング拠出」、「離転職時における企業年金の資産移管」など、企業年金と個人の年金資産の関係も、「企業年金」という議論の枠組みに入ることは、企業年金部会の委員も十分に納得ができる内容。そこで、事務局では「必要に応じて、年金部会との合同部会の開催も」という展開も示唆している。

 また、「個人型DC」について、第3号被保険者や公務員への適用拡大の議論は、政府が進める「日本再興戦略」にある「豊富な家計資産が成長マネーに向かう循環の確立」として示された「確定拠出年金の一層の普及等を図るため、国民の自助努力促進の観点から確定拠出年金制度全体の運用資産選択の改善、ライフスタイルの柔軟性への対応等について、3階部分も含めた公的年金制度全体の見直しと合わせて検討を行う」という指針に沿った議論として、年金部会での議論とのすり合わせも必要とした。

 次回の開催は、「ライフコース多様化への対応について」の議論を深める。また、11月までに、「現行制度の改善」、「公的年金制度や税制等との関係」、「ガバナンスの確保」について議論することを予定している。

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