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日本DCフォーラム、DC担当者の「当事者意識」が加入者教育を支えるポイント

2014-10-16

 NPO法人確定拠出年金教育協会が主催する「第3回 日本DCフォーラム」が2014年10月15日、東京・茅場町の東京証券会館ホールで開催された。確定拠出年金の継続教育や制度運営に特徴のある事業会社を表彰する「DCエクセレントカンパニー表彰」が行われた他、企業のDC担当者によるパネルディスカッション「DC制度運営のマネジメントと加入者教育のあり方」が開催された。定員200名で設定された会場には、企業の確定拠出年金担当者が集まり、具体的な制度設計や継続教育の進め方などの話に最後まで熱心に耳を傾けていた。(写真は、「第3回 日本DCフォーラム」で実現した事業会社のDC担当者によるパネルディスカッションの様子)

 「第3回 日本DCフォーラム」では、「DCエクセレントカンパニー表彰」として、SCホールディングス、武田薬品工業、富士ゼロックスの3社を表彰。また、「“運用しないリスク時代”にいかに備えるか」をテーマに、アライアンス・バーンスタインのDC推進室長の後藤順一郎氏と、ブラックロック・ジャパンのコンサルタント・リレーションズ部長の川原淳次氏がパネルディスカッションを展開。“運用しないリスク時代”に備えるための具体的なDC商品について、両社から提案する運用商品の紹介もあった。また、ワールドゴールドカウンシル日本代表の森田隆大氏が「分散投資の一環として、“金”を保有する効用を検証する」と題した講演を行った。

DCエクセレントカンパニーが語り合う加入者教育

 そして、フォーラムの最後に設けられたパネルディスカッションで、武田薬品工業人事部の小川寛六氏、日本出版販売人事部多様化推進チームの鈴木一成氏、富士ゼロックス人事部社会保険年金チームの西崎保彦氏による議論があった。モデレーターはオフィス・リベルタス代表取締役の大江英樹氏が務めた。

 大江氏は、過去2回の日本DCフォーラムのパネルディスカッションに参加してきた経験を振り返り、「過去の2回は、ジャーナリストとコンサルタントの組み合わせ、また、運用会社の担当者が議論する場だったが、今回は初めて企業の担当者が、それぞれの事例を持ち寄って話し合うという場になった。しかも、登壇いただくのは、今年のDCエクセレントカンパニー表彰を受賞した武田薬品工業と富士ゼロックス、そして、過去にDCエクセレントカンパニー表彰を受賞した日本出版販売という、特徴のある3社に参加していただき、大変興味深いパネルになった」と評した。

企業のDC担当者の「当事者意識」の高さが支える加入者教育

 実際に、3社から紹介のあった退職・企業年金制度のあり様は3社3様。制度に占めるDCの位置づけも、退職給付制度の上限40%を占めるところから、年金制度を補完する程度の位置づけまで、それぞれの事情で設定されている。

 ただ、制度の定着や継続教育などへの取り組みは、3社それぞれに「当事者意識が強く、自分たちで考えて実行するというしっかりした考え方で運営されていることが共通している。加入者目線で、会社の実情に合わせた取り組みをされている」とモデレーターの大江氏が総括するものだった。その効果は、「DCの保有資産残高ベースで、元本確保型への投資比率が30%を切って70%強が投信で運用されている」(武田薬品)、「マッチング拠出の利用比率が利用可能対象者の50%を超える」(武田薬品、日本出版販売)など、一般のDC制度の平均を大きく上回って、資産運用に従業員が積極的に取り組むDC制度につながっている。

3社3様の独自取り組みの実際

 このような成果につながる継続教育のあり方について、3社それぞれに独自の取り組みを行っている。たとえば、富士ゼロックスの西崎氏は、「社員が入社時に受けるDCの加入時研修を自分で受けてみたところ、2時間の研修時間が拷問のように感じられた。まして、学生から社会人になったばかりでは、運営管理機関が法令に従って用意した研修内容は、そのほとんどが頭に入っていないと思えた」という。そこで、新入社員向け研修の独自のテキストを人事部社会保険年金チームで自作。「受講者の立場に立って、集中力が継続する時間内で、ポイントを絞って飽きさせないことを第一にした研修内容に改めた」という。その結果、新入社員のDC加入率が目に見えて向上し、過去5年と比較するとDCの投信での運用比率が拡大し、2014年4月入社社員の投信運用比率は64%にまでなったという。

 また、日本出版販売の鈴木氏は、「社員に寄り添った手作りのセミナー」について語った。同社には、「年金セミナー」の他、「セミナー55」(55歳を対象としたセミナー)、「セミナー58」、メルマガ、イントラ、eラーニングなど、さまざまな継続教育メニューを揃えるが、それらを手作りで実施し、セミナー講師も社内の担当者が務めているという。「自社研修が、どの程度、従業員の資産形成に効果があったかという効果測定を目的とはせず、少なくとも、運用にはリスクがあることをしっかり伝えることが大事。銘柄選択やスイッチングなどは各々の社員の裁量しだいなのだが、それらの資産運用のあり様をずっと見守っていく責務があると思っている」と、加入者教育にあたっての姿勢を語った。

 そして、武田薬品の小川氏は、「加入者教育は、従業員の財産形成支援策として捉え、60歳以降に年金を受け取る際に、想定利回りを上回るような成果を全社員が残せるように継続的に改善に取り組む」と位置付けている。今後の社内教育は、対象者区分やテーマ設定など「マーケティングの発想で参加者にどうすれば理解してもらえるかを考え、講師の選定を含めて見直しを考えていく」と語った。武田薬品では2012年3月末のDC加入者全体の資産運用利回りが0%台だった状況を脱し、現在は2007年4月にDCを導入して以来、年平均5.7%の実績を残すまでになっているという。「5%台の運用利回りは現時点での一時的な現象かもしれないが、後で振り返ってもDCで運用しただけの成果が得られたと思えるようにしていきたい」と、加入者教育を意識的に実施していくと語っていた。

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