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フィデリティ投信、平均で年11%の運用利回りを記録したDCプラン

2014-10-21

フィデリティ投信が導入している確定拠出年金(DC)プランは、2013年度のプラン全体の運用利回りが年率11.1%になった。同社は、資産運用の専門会社だが、同社社員は全員が資産運用ノウハウに精通しているわけではない。高い運用利回りを実現した同社プランの資産運用は、どのように行われているのだろうか? フィデリティ投信執行役 法人/年金ビジネス本部長の小泉徹也氏(写真)に、同社のDCの運用状況と今後のDC市場の展望について聞いた。

DCプランの導入経緯、また、プランの概要は?

フィデリティ投信
執行役 法人/年金ビジネス本部長
小泉 徹也氏

 2003年6月にスタートしました。運営管理機関は日本生命です。運用商品のラインナップは、現在は20商品となっていますが、制度開始から商品の追加を2回実施しています。当初はベーシックでシンプルなラインナップで始まり、海外株式には先進国だけにしか投資できなかったのですが、それを新興国にも投資できるようにしました。運用の選択肢を増やすという観点で、ラインナップの見直しを行っています。

 資本関係はありませんが、米国のフィデリティにおいては、DCプランの運営管理ではナンバーワンの実績があります。このため、日本でDC制度がスタートした2001年秋の直後から、DCプランを導入する計画がありました。社員の老後資産を形成する手段として多様な選択肢を用意するとともに、日本におけるDCの普及・発展に参画していきたいという思いから、できるだけ早い時期に制度導入を行いました。

 当社のDC制度のガバナンス上の特徴は、米国で普及している「DCコミッティ」を設置しているところです。日常的な制度運営は人事部が行いますが、制度全体の枠組みの変更などは、社長も含め、財務部門や経営企画部門のメンバーなども参加する「DCコミッティ」で決定し、必要に応じて従業員代表に諮っています。過去2回実施した運用商品の拡大、2012年7月にマッチング拠出を導入した時など、「DCコミッティ」で議論の上で決定しています。

 日本の企業も、結果的には「DCコミッティ」の役割を組織的に果たしていると思います。DCを会社の制度として運営するためには、人事部だけで完結するものではなく、財務部門や経営会議を通した意思決定があります。当社では、そこをグローバル企業としての経験を踏まえて専門の意思決定機関を設けているのです。

 米国や英国で「DCコミッティ」が設置されている背景については、例えば、米国ではDCの運用商品の選定などもプランスポンサーである導入企業の責任とされ、DC制度運営についてプランスポンサーの責任が重いところがあります。そのために「DCコミッティ」を設けて、会社全体の意思決定、責任の所在を明確にしているのです。一方、日本では、商品選定については運営管理機関が責任を持つ制度になっています。

貴社のDCプランで社員の方々の運用成績はどうですか? やはり運用の専門会社だから、一般の企業と比較すると平均運用利回りは高いのでしょうか?

 2014年3月末時点で、プラン全体の平均運用利回りは過去1年間の修正総合利回りで11.1%だったという報告を受けています。運営管理機関である日本生命の全体平均と比較すると高い利回りになっているようです。

 ただ、当社は運用会社ではありますが、社員の全員が資産運用のノウハウに精通しているわけではありません。システムや総務・人事などの担当者もいます。

年利回りが10%を超えるというのは、かなり高い運用成績といえると思うのですが、どのような運用ポートフォリオになっているのでしょうか?

 全体の資産配分状況は、75%以上が価格変動商品での運用になっています。価格変動商品の内訳では、エクイティ(株式関連)への投資比率が高いという傾向があります。一般には、価格変動商品への投資は40%程度といわれていますから、当社プランの運用成績が高く出たのは、株式への投資比率が高いことと関連があると思います。

 ただ、エクイティへの投資配分が高いのは、DC以外の個人金融資産との兼ね合いがあってのことだと思います。銀行や証券会社などの一般口座では預金やMMFなどの元本確保型商品を保有し、DCは長期の資産形成と位置づけて、エクイティを中心に考える社員が多いようです。

 また、プラン全体の特徴としては、バランス型への投資比率が少ないという傾向があります。個々の判断によって、個別ファンドを組み合わせてポートフォリオを構築する傾向があるところは、運用業務に携わる社員も少なくない当社のDCプランの特徴といえます。

社員の全員が運用の専門家というわけではないということでしたが、投資教育などで工夫されていることはありますか?

 投資教育は、運営管理機関である日本生命から講師を派遣していただいて実施しています。継続教育は年1回実施を基本に、任意参加のセミナーを開いています。また、フィデリティ退職・投資教育研究所の所長である野尻哲史が講師を務めるWebセミナーを実施したり、同研究所が実施している全国調査の結果等についての情報提供を行い、老後の資産形成支援を行っています。

 ただ、マッチング拠出について、社内では利用を呼び掛けているのですが、マッチング可能対象者のうち、マッチング拠出を実行しているのは30%程度という状況です。30%という水準は、一般の企業の実績と比較すると決して低くはないのですが、まだまだ不十分であると感じています。

現在、DCについては制度改正の議論も続いています。今後、DCが一段と普及・発展していくためには、どのような改正が必要だと思いますか?

 制度としての自由度を上げ、より使い勝手の良い仕組みにしていくことが大事だと思います。たとえば、拠出限度額についても、DB(確定給付年金)に限度額がないように、原則は撤廃しても良いと感じます。拠出限度額を撤廃しても、企業として拠出できる金額には自ずと限界があります。もっと企業にフリーハンドで制度を活用できるようにすることが必要なのではないでしょうか。

 退職給付債務の問題が企業業績に与える影響が議論の対象になることがあるように、企業年金は重要な経営課題のひとつだと思います。グローバルに競合している企業は、日本よりも自由度が高い制度を導入している企業とも戦わなければなりません。日本の企業が日本国内の制度の制約のために、グローバル競争で不利な状況にならないよう、制度改正の議論が進むことを期待します。

貴社がDC市場で果たすべき役割、また、今後の取り組みは?

 これから就職される若い方々は、企業が用意する老後の資金はDCのみというケースが、これから増えていくと思います。資産運用に関する知識や経験がなくても、会社に入社した時からDCによる資産形成を始めなければなりません。そこで当社はこの度、米国の401(k)でデフォルト商品(運用の指図をしない場合に自動的に投資される商品)として普及しているターゲット・デート・ファンドを新たに設定しました。

 ターゲット・デート・ファンドとは、退職予定の年を資産運用の最終年(ターゲット・デート)とし、そこに向けて徐々に資産配分比率を変更して安定運用部分を増やしていくタイプのファンドです。今回、日本のDC制度への適応を考慮して「ターゲット・デート・ファンド(ベーシック)2050」、「ターゲット・デート・ファンド(アクティブ)2050」を設定します。新ファンドは、ターゲット・デートを2050年とし、20代-30代の若い方々に利用していただきたいファンドです。「ベーシック」は投資対象をインデックス・ファンドやETFとすることで、低廉なコストを実現。「アクティブ」は、マネージャー・セレクションを通じて、より積極的なリターンの追求を目指します。

 若い頃から資産形成を行うことは重要ですが、若い頃には資産運用について学ぶよりも、仕事を覚えてキャリアアップするという、より重要なことがあります。運用はプロに任せたいというニーズに応える上で、投資対象や資産配分を自動的に変更するターゲット・デート・ファンドは不可欠です。米国でもターゲット・デート・ファンドは、401(k)の主力の運用商品として活用され、2013年末にはDCを通じたターゲット・デート・ファンドの運用資産残高は6,000億ドル(約60兆円)を超える規模になっています。さらに、ターゲット・デート・ファンドに100%資産配分している米国DC加入者比率は、すでに35%を超えています。

 日本のDCにおいても、長期の資産運用の手段としてターゲット・デート・ファンドが一定のシェアが獲得できるように、積極的な情報発信を行っていきたいと思っています。

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