DCニュース

 

みずほ銀行、管理者数約100万人の運営管理機関としての経験が柔軟な提案を支える

2014-10-24

デフォルト商品にターゲットイヤーファンドが採用された経緯を聞く

 みずほ銀行が運営管理機関を務める企業で今夏、DC制度のデフォルト商品に「ターゲットイヤーファンド」を採用する企業が現れた。管理者数約100万人というわが国最大の運営管理機関であるみずほ銀行としても初めてのケースとして関係者の耳目を集めた。一般にデフォルト商品には預金等の元本確保型商品が採用される中で、元本割れもあり得る運用商品を「デフォルト(運用指図をしない場合に自動的に買い付ける商品)」に採用する動きは、今後、広がりをみせるのか? みずほ銀行年金営業部部長の八木政幸氏(写真)に、「ターゲットイヤーファンド」がデフォルト商品に採用された経緯や、昨今のDCに対する企業ニーズの変化等について聞いた。

貴社が運営管理機関を担当する企業のDC制度に、デフォルト商品として「ターゲットイヤーファンド」を採用する企業が現れたということですが、その経緯は?

みずほ銀行
年金営業部部長
八木 政幸氏

 今年7月にデフォルト商品を元本確保型商品から「ターゲットイヤーファンド」に見直した企業は、福岡で教育事業を展開されている企業ですが、DC制度を導入して3年あまりが経過していました。この3年間で市場環境も変わったことも踏まえて、制度全体を再点検してみようという考えを持たれ、当行の担当者とディスカッションを重ねた結果、今回のデフォルト商品の見直しへとつながっていきました。

 教育事業を本業とされていることから、社員教育にも熱心で、DCについても「経済の動きを知って、その変化に対応する対策について考えを巡らせることは、“教える”という本業につながる」と、継続教育にも積極的に取り組んでこられました。ただ、従業員のDCでの資産運用は、預貯金等を中心にした元本確保型商品が多いという状況でした。緩やかなインフレをめざす金融政策が進んでいることもあり、社員の平均年齢が30歳手前にある若い従業員が定年を迎える頃には、「運用しないリスク」が顕在化するのではないかということが、会社側の懸念のひとつになっていました。

(企業を担当した年金営業部運営管理チーム参事役の伊牟田浩司氏) 福岡を地盤に中国にも進出されている関係から、役員の方々は、たびたび中国を訪問されているのですが、訪れるたびに、物価が上がっていることに驚かれるそうです。長期の資産形成を考えた時に、インフレのリスクは決して無視できないという考えを経営陣の方々が共有されていたことが、DC制度の再点検に反映され、デフォルト商品の見直しにもつながったと感じました。

デフォルト商品を「ターゲットイヤーファンド」にするというのは、運営管理機関としての貴社からの提案ですか?

 制度運営については、導入企業それぞれの考え方があり、制度への期待もそれぞれに異なりますのでデフォルト商品に特定のものを推奨するようなことはしていません。今回の事例においても、当行からは情報提供として米国など諸外国の実情を説明するとともに、「ターゲットイヤーファンド」の紹介をしたに過ぎません。当行からの情報提供にさきほどご説明したような企業としてのお考えがマッチして、見直しにつながりました。

 企業年金としてデフォルト商品に何を置くのかは、制度の性格を決める重要な要素になると思います。これまでは、事務手続き上、従業員が拠出金の運用先を指定しなかった場合の受け皿が何か必要という位置づけで預金商品を選ぶケースがほとんどでした。従業員への説明としては、「運用指図をしない場合は預金で積み立てられます」と説明するだけで十分だったのです。

 ところが、今回のように、経営陣の方々が将来のインフレに備えることまで考えて、制度全般を見直した場合、「従業員の多くが預金でDCを運用している状況で良いのか?」ということが浮かび上がることになりました。そして、「将来の資産形成のためには、運用商品として何が相応しいのか?」と議論が進みました。運営管理機関としては、制度導入後にも改めてこのような議論が起こることは、市場環境や社会情勢の変化に対する企業側の対応として大切なことであると考えます。

(伊牟田氏) 今回のデフォルト商品の見直しも商品の仕組みやリスクを説明するだけではなく、「なぜ、このような見直しを行ったのか」ということを従業員に周知することが重要と考えられ、全社員を対象にした説明会を開催しました。説明会を終えて社員の方々に話をうかがうと、「今回のデフォルト商品見直しの話は参考になった」と前向きに評価していただくことができ、会社側の意図が伝わっているという感触を得ました。

デフォルト商品にターゲットイヤーファンドの採用といった新しい動きが出て、また、厚生労働省において企業年金の制度改正の議論が続くなど、企業年金を巡る動きが活発になってきているように感じますが、一般の企業の動きに変化は?

 企業年金については、厚労省の企業年金部会の議論を踏まえ今後の制度内容がどう変わるのか、各企業において担当者が、その行方を見守っているという状況だと思います。近年は、DCへの関心が高まっていることは事実です。今回のデフォルト商品の見直しについての話題も、詳しく話を聞きたいという依頼は少なくないですし、私どもから情報提供として話題を提供すると熱心に話を聞いてくださる企業もあります。

 また、「ターゲットイヤーファンド」は、ターゲットイヤーに向けて運用資産を成長資産から安定資産へと自動的にシフトしてくれる仕組みであり、投資教育でお伝えしている資産配分の見直しを自動的行ってくれる“究極のおまかせファンド”という意味合いがあることから、ラインナップに同様のファンドが入っていない企業では、品揃えを充実させるという観点から検討するところもあります。

貴社のサービス内容で近年、拡充されたところはありますか?

 継続教育のサービス内容は、日々、改善を進めています。世代を分けて開催するライフプランセミナーをはじめ、前払い退職金との選択制を採用している企業向け、資産運用に強い関心を持つ方々向け、年金受給に特化したセミナーなど、様々な対象者やテーマでセミナーメニューを開発しています。多くの企業や加入者の方々からご意見をいただいて、セミナー内容を改善してきたという経験があるので、各企業の状況や要望に合わせて、柔軟にセミナーメニューを設計できるところに強みがあると思います。

 また、オンラインセミナーと組み合わせた研修の提案、さらに、スイッチングをWeb上で行う際の手続き簡素化、マッチング拠出の申込受付をWeb画面でも行えるようにする仕組みの提供など、Webベースのサービスについても拡充を進めています。DC導入を検討されている企業やDCを選択制にしている企業向けに、事前に制度導入の流れを体験していただけるWebツールも提供しています。

 さらに、企業の福利厚生の仕組みと、ローンや預金など銀行サービスを一覧化し、ここにDC口座の残高管理もできるようにした職域Webサービス「プロムナードウェブ」も提案しています。銀行、信託銀行、証券会社で提供するサービスを「One MIZUHO」として一体で提供することをコンセプトに、資産形成から各種ローン、年金や相続まで、あらゆるニーズにワンストップでお応えできるサービスとして導入が進んでいます。

 一方、運用商品のラインナップについても、これまでになかったカテゴリーで商品の拡充を行っています。たとえば、将来のインフレリスクに備えて物価連動国債を組み入れたファンド、あるいは、市場環境の変化に対応して資産配分比率を自動的に調整するバランスファンドなど、新しくラインナップに加えて情報提供を行っています。

今後のDCが発展するため、制度改正のポイントは?

 制度改定の前に、まだまだ運営管理機関として制度を良く知ってもらう努力が必要だと考えています。今年10月に「確定拠出年金 ベストアンサー100」(編著:みずほ銀行年金営業部、出版社:きんざい)という本を出したのも、そのような思いからです。当行は運営管理機関として約100万人にサービスを提供していますが、導入企業や加入者の方々から寄せられた代表的な質問や疑問について、Q&A形式で簡潔にわかりやすく解説しました。

 DCの更なる普及のためには、制度に対する認知度を高め、理解を促すことが第一の課題なのだと思います。そのための工夫をDC制度を導入した企業ならびに加入者のみなさまに提案し、サポートするのが、われわれ運営管理機関の役割だと思っています。

 DC制度そのものに従業員の関心が薄く、継続教育がままならないという悩みは、DC制度を導入した企業に共通する悩みですが、関心が薄いからこそ、制度を運営する事務局は、あらゆる機会をとらえて、従業員の方々に“気づき”の機会を提供することが重要だと思います。当行は様々な企業のDC制度の運営をサポートし、多くの加入者の方々からの多様な要望にお応えしてきた経験から、制度運営に関するノウハウを積み上げてきています。これからも企業ごとの事情に合わせた課題解決策を事務局の方々と一緒に考え、制度の普及・発展に努めていきたいと思います。

 制度改正については、すでに議論になっている通り、拠出限度額の引き上げや脱退一時金としての支払いを可能とするなど、制度の仕組みを柔軟にしていくことが重要だと思います。また、DCのポータビリティを確保する上でも、誰もが加入できる米国のIRAのような制度も整備されると良いと思います。

バックナンバー

2014 | 2015 | 2016 | 2017