DCニュース

 

NTTグループ、9万人のDC制度で抜群のスケールメリットを活かす

2014-11-05

日本電信電話株式会社
総務部門人事・人事制度担当部長
梶原 全裕氏

 NTTグループは2014年4月に、NTT東日本やNTTドコモ、NTTデータなどグループ企業の従業員、約9万人が加入する確定拠出年金(DC)制度をスタートした。1規約として国内最大規模での船出となったDC制度について、持株会社である日本電信電話の総務部門人事・人事制度担当の担当部長、梶原全裕氏(写真)に、DC導入を決定した経緯と今後の制度運営について聞いた。

NTTグループとしてDC導入を検討開始したきっかけは?

 DC導入のきっかけは2つあり、ひとつには2007年からの世界的な株安によって確定給付企業年金(DB)の運用損失が大きく膨らんだことがあります。短期間に企業財務を大きく傷つけてしまう事態を経験し、従業員の将来を託す企業年金制度のあり方として、危うさを感じました。企業の業績とは関係のないことによって財務内容が大きく左右されてしまうものを、長期にわたって維持できるのだろうかという危惧です。

 もう一つは、厚生年金などの公的年金制度が、徐々に役割を縮小していく中で、従業員の老後の生活に必要な資金を企業年金という形で用意したいという思いがありました。DCは長期安定的な企業年金制度といえます。また、DCを通じて自ら資産を運用するというスキルを身に付けることは、社員の自立意識を醸成する上でも重要だと感じました。

 制度導入を進める際の労使交渉では、「企業の年金運用リスクを従業員に押しつけるのか」という意見もありましたが、想定利回り2.0%をターゲットにした「バランス型運用商品」、さらに、社員の多様なニーズに対応した運用商品など充実したラインナップを用意し、かつ、資産運用に関する知識とスキル向上をめざす投資教育を実施していくことを説明し、労使合意に至りました。

約9万人が加入対象になる国内で最大規模のDC制度ですが、制度の概要は?

 DC制度の加入対象は、NTTグループ規約型企業年金(DB)を適用している社員です。持株会社、NTT東日本、NTT西日本、NTTコミュニケーションズ、NTTデータ、NTTドコモ等の39社、約9万人が対象になりました。旧制度では退職給付制度として、規約型企業年金と退職一時金という2本建ての制度にしていたのですが、このうち、規約型企業年金の新規積み立てを2014年3月31日で停止し、2014年4月1日以降はDCで積み立てることにしました。

 DC導入以前の過去の積立分については規約型企業年金として維持し、運用は継続しています。14年4月以降入社の新入社員は、DCと退職一時金のみの制度になっています。さらに、NTTグループには旧公社時代の共済制度を引き継いだNTT企業年金基金が存続しています。そして、1人あたりのDC拠出限度額は月額で2万7500円へ拡大しましたが、この拠出限度額の範囲内で、社員が任意に上乗せ拠出するマッチング拠出は、制度スタート時から導入しました。

運営管理機関を選定するにあたっての選定ポイントは? また、グループで1つの規約として運営するメリットは?

 運営管理機関は、みずほ銀行にお願いしました。選定にあたっては、委託するにあたってのコスト、そして、投資教育のサポート品質の高さなどを検討して選びました。

 9万人の統一制度としたことで、スケールメリットが大いに活きていると感じます。1人あたりの制度運営コストもそうですが、個別の運用商品についても、かなり魅力的な商品群を取り揃えられたと考えています。これは、グループの個々の企業が、数千人規模での制度を導入するよりも、加入者の個々のメリットが大きな制度になったと思います。

制度導入の研修は、規模が大きいだけに大変な負担になったのでは?

 導入研修は、企業年金制度への理解を向上し、また、投資に対する不安解消など、円滑な制度移行を図るため、全社員を対象とした「DC制度導入セミナー」を2段階にわたって実施しました。

 まず、「年金制度概要編」として1時間程度の集合研修を各職場単位で、全国で約1,000回実施しました。公的年金、そして、それを補完するNTTグループの企業年金制度について体系的に学習することを目的とし、退職後に自身が必要とする所得水準の確保に向けた財産形成の重要性などを説明しながら、今回の制度改定への理解を求めました。

 そして、「投資教育編」として約2時間の集合研修を全国で約800回開催しました。DC制度の概要、資産運用の基礎知識や運用商品の特徴についての学習、また、参加型の資産運用シミュレーション研修を実施しています。

 この制度導入セミナーは、制度改定に関する労使交渉と並行して検討を進め、労使交渉が決着した後、すみやかに全国で展開しました。「年金制度概要編」は2013年11月から開始し、「投資教育編」は同12月にスタートしています。そして、これらの導入セミナーの内容確認と、学習内容の復習、そして、具体的な運用手続きを学ぶ「eラーニング」が2014年3月から稼働しています。

研修の効果は、社員の方々の行動に反映されていますか?

 DC制度の運用は、2014年3月に専用口座を開設し、4月に運用商品の選択、そして、5月に初回掛金の拠出を実施しました。結果として運用商品の指定がなかったのは20%弱でした。ただし、いわゆるデフォルト商品は生保の元本確保型商品としていますので、未指定者の中には、元本確保型商品で運用したいという意識がある社員も含まれているかもしれません。なお、制度全体で元本確保型商品への投資比率は40%程度です。

 一方、制度導入研修では、マッチング拠出のメリットを強調して伝えました。DC口座で運用することによって、拠出・運用過程で課税されないメリットがありますが、さらに、さきほどのスケールメリットによって、個別の運用商品の運用コスト(信託報酬など)が、一般に販売されている同種の運用商品と比較して格安になっています。60歳以降まで引き出せない制限はありますが、老後のための資産を作っていく手段としては、マッチング拠出の活用は大きなメリットがあるという説明をしました。結果として、加入者全体の3分の1にあたる約3万人がマッチング拠出を利用しています。

今後の投資教育(継続教育)については、どのような方針ですか? 貴社DC制度には運用商品が30本あるということですので、それらを使いこなすという点でも投資教育の意味は大きいと感じます。

 運用商品については、より多くの商品を採用し社員の選択の自由度を広げたいという思いから、ラインナップを充実させたいということには、こだわりがありました。

 運用商品の区分としては、「元本確保型」、「バランス型運用商品」、「リスク・リターンの異なる個別の運用商品」に大別できます。個別の運用商品では、終身年金として受け取り可能な商品や、海外の先進国だけではなく、新興国にも投資できる商品も用意しました。

 継続教育については、2つの側面から実施していく計画です。ひとつには、世代別にライフステージに合った内容で情報提供を行うこと。20代の若い世代と、30代-40代では生活上の関心も異なるでしょうから、それぞれのライフステージに合わせたテーマを設定し、セミナーや勉強会への参加を呼び掛けていきたいと考えています。

 もうひとつの側面は、時代にマッチしたタイムリーな情報提供です。国の社会保障政策の変更、また、世界の金融市場の大きな変化など、老後の資産形成を考える上で、知っておいた方が良い情報をタイムリーに伝え、必要であれば、勉強会を開催するという対応を行っていきたいと思っています。

 現在、制度導入から半年を経過し、社員の投資行動を分析しようとしています。Webサイトにアクセスした回数、全体での運用のバランス、運用利回りなど、全体の傾向を分析した上で、継続教育についての具体的なプランを作ります。継続教育については、企業として責任をもって取り組む必要があると考えています。

今年度のDC制度導入に向けて、様々な検討を行われた経験を踏まえ、現在のDC制度で改善が必要であると感じた点は?

 ひとつには、脱退一時金の問題です。現在の制度では一律に60歳以降にならないと引き出せない仕組みになっていますが、グループの社員には外国人もいます。退職して母国に帰る場合、年金として積み立ててきた資金を日本に残していくというのはおかしなことだと感じます。脱退一時金の問題は現在の制度改定の議論にもなっていますが、より柔軟な制度に改めていただきたいと感じました。

 また、拠出限度額も、より拡大してほしいと思います。マッチング拠出の上限を企業の拠出金額の水準としている制限も緩和し、もっと自由に投資ができる環境に改めてほしいと感じます。

 今後の少子高齢化の進展を考えると、公的年金だけでは国民の老後生活を支えていくことは、ますます厳しくなっていくことは見えています。それを補完する手段として企業型DC制度は、重要な役割を担う存在になると思います。より多くの企業が導入し、そして、加入者が活発に制度の活用ができる環境に変えていただきたいと思います。

今後のDCについての取り組みは?

 まずは、継続教育のプランを作っていきたいと考えています。そして、現在は9万人の制度ですが、グループ各社には独自の退職給付制度を導入しているところもあって、今回の制度スタートと同時にはできなかった会社もあります。今後、グループの従業員がより広く制度が利用できるように、対象者の拡大を図っていきたいと考えています。

バックナンバー

2014 | 2015 | 2016 | 2017