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第28回年金部会、今後の制度改正を方向付ける「5つの柱」を提示

2014-11-20

 第28回社会保障審議会年金部会が2014年11月19日、東京・霞が関の厚生労働省の会議室で開催された。今年8月から続けてきた議論を整理し、今後の議論の方向性を確認することが主なテーマになった。労働力人口が減少する時代を迎え、公的年金の給付水準が低下していく問題に対し、将来の世代の給付水準を確保するため労働参加の促進や、働き方の選択に中立的な制度設計が求められていることが確認されている。一方、前回の部会で話題になったGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の「基本ポートフォリオの変更について」説明があった。

 事務局である厚生労働省が示した資料で、「今後の制度改革の基本に置くべき考え方の抽出・整理」として、5つの柱が示され、委員からは「今後の方向性として、これまでの議論を客観的にまとめてある」と好感されて受け入れられた。5つの柱は以下の通り。

  • (1)労働参加の促進とそれを通じた年金水準の確保(就労インセンティブを阻害しない制度設計、働き方の選択に中立的な制度設計、より長く働いたことが年金給付に的確に反映される制度設計が求められる)
  • (2)将来の世代の給付水準の確保への配慮(将来の世代の給付水準を確保するためには、マクロ経済スライドによる年金水準の調整を早期に確実に進めていくことと、年金制度を支える生産活動とその支え手を増やすこと以外に方法はない。(1)の制度設計に加え、年金の改定(スライド)ルールに見直しによって年金水準の調整を極力先送りしないような配慮が求められる)
  • (3)より多くの人を被用者年金に組み込み、国民年金第1号被保険者の対象を本来想定した自営業者に純化(現在、第1号被保険者のうち自営業者の占める割合は2割程度に過ぎず、被用者年金の適用を受けない給与所得者が多数を占めるようになっている)
  • (4)(1)~(3)を通じた基礎年金の水準低下問題への対応(基礎年金のスライド調整期間が長期化し、その水準が相対的に大きく低下する問題は放置できない。財政検証に際して行ったオプション試算からは、これまで述べてきた(1)~(3)の措置はいずれも基礎年金の水準低下幅の拡大を防止し、あるいは水準回復につながる効果が期待できる)
  • (5)国民合意の形成とスピード感を持った制度改革の実施

 この5つの方針について、委員からは、特に「国民合意の形成」について、「合意を得るためには丁寧な説明が必要だが、スピード感を持って制度改革に取り組むことは重要。積極的な情報発信を行うことで、国民への意識喚起を行ってほしい」という意見が相次いだ。

 マクロ経済スライドの発動が遅れたことで基礎年金の調整期間が長期化する結果となり、基礎年金部分の代替率(現役時代の所得と年金として受給する金額の比率)低下が大きくなり、所得代替率で50%を維持するとしていた目標の維持が難しくなっている。最新の財政検証の結果、現在の制度では2024年以降の平均実質成長率がマイナス0.2%の場合は2058年の代替率は42.0%になると試算されている。このため、今後は、短時間労働者に対する被用者保険(厚生年金基金等)の適用拡大を段階的に進め、公的年金の担い手を拡大して所得代替率を引き上げる、高齢期の高所得者に対しては税制や社会保障において適正な負担を求めるなどの方向性を確認している。

 一方、GPIFの基本ポートフォリオの変更については、2015年4月以降に予定されていたポートフォリオの見直しが、10月31日に前倒しで実施されたこと、また、新しい基本ポートフォリオでは国内債券の資産構成割合が60%から35%に落とされ、国内株式が12%から25%、外国株式が12%から25%と、株式への配分比率が大幅に拡大されたことに対する説明が求められた。

 GPIFの調査室長である清水時彦氏が参加して説明にあたり、「6月3日に公表された財政検証で示された長期的な経済見通しに基づいて、厚生労働大臣から中期目標として実質的な運用リターン(運用利回りから名目賃金上昇率を差し引いたもの)1.7%を最低限のリスクで確保することという目標が示された。長年続いたデフレからの転換という大きな運用環境の変化の節目にあり、長期的な経済環境の変化に速やかに対応する観点から、来年度を待たずに前倒しでポートフォリオの変更を実施した。国内債券への投資配分を引き下げたのは、目標とするリターンには債券の期待リターンでは及ばないため」という説明があった。

 委員からは、「来年4月を待たずに変更するに至った“経済環境の変化”とは、どの程度の変化なのか? 長期の運用を行うGPIFの運用の基本方針の変更は、明確なルールに基づいて実施される必要がある」、「GPIFの運用の結果は、年金制度の運営にも深く関わるため、運用方針等については年金部会で報告されることが望ましい」などの意見が出た。

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