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第29回年金部会、公的年金の4つの検討課題に約1年半の議論を整理

2015-01-22

 第29回社会保障審議会年金部会が2015年1月21日、東京・永田町で開催され、2013年10月から足掛け3年間の議論を整理した。2013年12月に成立した社会保障改革プログラム法で、公的年金に関して

  • (1)マクロ経済スライドの見直し
  • (2)短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大
  • (3)高齢期の就労と年金受給のあり方
  • (4)高所得者の年金給付の見直し

――の4つの検討課題が明記され、これらの検討課題について議論してきた。また、2014年の財政検証において、財政の現況と見通しを確認するための検証作業にも取り組んだ。

 

2016年10月の被用者保険の適用拡大は働き方の多様性を踏まえ検討

 2012年8月に成立した年金機能強化法によって厚生年金等の被用者保険の適用拡大は、(1)週所定労働時間が20時間以上、(2)月額賃金が8.8万円以上、(3)勤務期間が1年以上見込まれること、(4)学生を適用対象外とすること、(5)規模501人以上の企業を強制適用の対象とすること――の全ての要件を満たした場合に、適用拡大することとされているが、部会では、その対象範囲を規定する要件のあり方、そして、適用拡大施行後の更なる適用拡大の進め方について議論した。

 全体的な方向については、働き方の多様性を踏まえて更に適用拡大を進めていく必要があることに異論はなかった。ただ、短時間労働者への適用拡大については、短時間労働者の比率が高い業種や中小企業の負担も考慮すべきとの意見があった。一方、フルタイムの雇用労働者でもかなり大きな規模で被用者保険を適用されていない者が存在するため、現行の被用者保険の適用について、適用漏れ対策の更なる徹底を図るべきとした。

 一方、16年10月以降の更なる適用拡大については、(1)週の所定労働時間が20時間以上という要件については、20時間未満で複数の仕事を掛け持ちするような人が適用対象から外れてしまう問題への対応が必要、(2)賃金が月額8.8万円(年収106万円)という要件は、月額5.8万円(年収70万円)まで引き下げた場合の試算結果を踏まえ、最終的には年収70万円まで適用範囲を拡大していくべきであるとの意見があった。

 (3)勤務時間が1年以上見込まれることについては、短時間労働者は異動が頻繁であるため、2カ月以上の雇用期間があれば適用されるべきとの意見があった。(4)学生の適用除外については、家庭を持っている学生、親の都合で休学して働く学生など学生像が多様化している実態を踏まえ、一律で適用除外とする必要はないという意見があった。

 (5)規模501人以上の企業に強制適用という規定は、中小事業者への激変緩和の観点から設定されたものであるが、適用要件を満たす被用者全員が社会保険適用されることが筋であり、経過措置として設けられた企業規模要件は引き下げることが必要であるとされた。

高齢期の就労と年金受給は65歳以降も就労できる機会の拡大が必要

 高齢期の保険料拠出期間については、20歳から70歳までが働く世代と考えた制度設計が必要ではないかという意見があった。また、年金の支給開始年齢については、高齢者の就労に関して多様な働き方や弾力的な就労が広がることを念頭におきつつ、国民の抵抗感が強いことを踏まえた慎重な検討が必要、また、高齢者に受給開始時期と年金額の対応の関係を提示して本人に選択させることを検討すべきとの意見があった。

2015年度に発動するマクロ経済スライドは分かりやすく丁寧な説明を

 2004年の年金制度改革で導入が決まったものの、今日まで発動されないままになっているマクロ経済スライド(年金額の改定)が、2015年度から本格的に発動されることに関する議論では、将来世代の給付水準の確保を図るためにも、物価変動が賃金変動を上回る場合に賃金に連動して改定する考え方を徹底することが必要であるとし、国民に対して分かりやすい説明を丁寧に行っていくことが重要であるとされた。

高所得者の年金給付は高齢者の就労インセンティブを阻害しない観点で継続議論

 社会保障の負担について世代間の公平のみならず、世代内の公平を期すため、高所得者の年金給付について見直し、かつ、高所得者には適正な負担を求めるという点に関して、議論が分かれ、年金に係る税制、福祉制度などを含めた全体最適の視点から、公平・公正となるよう、また、高齢者の就労インセンティブを阻害しない観点から議論が必要だとされた。

女性の活躍推進踏まえ「130万円の壁」を取り払う被用者保険の適用拡大を

 「働き方に中立的な社会保障制度」を実現するため、いわゆる「130万円の壁」といわれる就業調整問題が起きないよう被用者保険の適用拡大を進めること、また、第3号被保険者を将来的に縮小していく方向性について共有した。

 一方、多様な属性を踏まえた第3号被保険者制度の在り方を検討するにあたって、「配偶者」という立場ではなく、ライフサイクルにおける「個人」のおかれた状況に対応した措置が重要になるという意見があった。

 この他、「第1号被保険者の産前産後の保険料の取扱い」、「遺族年金制度の在り方」などについて議論の整理があった。いずれも、女性の社会進出や共働きの増加など現在の社会状況を踏まえ、制度全体としての公平性を保つ方向で議論が進んでいる。

 また、年金部会において、先に議論の整理を行った企業年金部会の整理の内容も報告されたが、委員からの関心が高く、「企業年金は公的年金とセットで議論することが必要」などの意見があった。

 議論の整理が行われたことについて、部会長である神野直彦氏(東京大学名誉教授)は、「2014年の財政検証を控える中でスタートした今回の年金部会の議論は、財政検証の枠組みを議論する中で、制度改革を実施した場合を仮定した『オプション試算』の導入を提言し、今回の財政検証で初めて実施されたオプション試算の結果から、活発で生産的な議論ができた。結果的に、今回の整理で示されたような幅広いテーマについて検討できたことは高く評価できる」と振り返った。

 また、厚生労働省の年金局長は、「今回の財政検証で、オプション試算を行ったことによって、経済と労働市場、また、年金との関係が明瞭になった。このオプション試算は、今後の財政検証においても継続されるモデルになったと考える。また、今回は公的年金について議論する年金部会と、企業年金に特化した企業年金部会を並行して開催したが、両部会ともに活発な議論の場となり、新しい議論の枠組みをつくった。委員による議論を踏まえて、直ちに手を付けるべきことについては必要な法令等の整備を働きかけ制度化を図っていきたい。また、将来の方針が示されたことについては、引き続き議論の場を設けて検討を進めたい」と語っていた。

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