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SCSK、DC拡充は歓迎するが企業の退職給付制度としてDBも重要

2015-01-30

SCSK株式会社
人事グループ人事厚生部長
新開和磨氏

 社会保障審議会企業年金部会などでの議論を踏まえ、厚生労働省は企業年金関連の法改正に向けた検討を本格化するタイミングを迎えている。確定給付企業年金制度(DB)と確定拠出年金制度(DC)を一体として、企業年金の枠組みを再構築しようという大きな制度改定が議論されている。1月にまとめられた企業年金部会での議論の整理について、実際に企業年金制度を運営している企業は、どのように受け止めるのか、SCSK人事グループ人事厚生部長の新開和磨氏に、率直な印象を聞いた。

現在の退職給付制度の概要は?

 DBとDCの並立で、標準モデルではDBが65%、DCが35%という構成です。これはDCの想定利回りを2%とし、定年時に全額一時金受け取りを選択した場合の割合です。

 当社は、2011年10月に住商情報システム(SCS)とCSKが合併し、その1年半後の2013年4月に退職給付制度を統合して、新制度をスタートさせました。この制度変更により、合併前と比較すると全体的にDCの割合が高まっています。

現在、社会保障審議会で企業年金の改正に向けた議論が進んでいます。その議論のひとつに、企業年金の拠出限度額について、DBとDCを一体で考え、現在は拠出限度額がないDBに一定の制限を設けてでも、DCの拠出限度額を引き上げようという議論もあります。DBとDCの拠出限度額について、どのように考えますか?

 DC拠出限度額の引き上げ自体は、今後の制度設計のバリエーションが広がるので、歓迎できる変化といえます。

 しかしながら、DB・DCを合計して一定の拠出限度額が設定されると、その水準によっては給付水準設定の自由度が損なわれるおそれがあります。もしもDB・DC全体の拠出限度額が現在の拠出額を下回った場合、現行制度の給付水準を確保するためにはDBの予定利率を引き上げざるを得なくなります。これが無理な運用につながりかねないことも懸念されます。

DCの給付については、現在は一時金で受け取る人がほとんどなのですが、これを「年金」としての位置付けを明確にするため、年金払いを推奨する方向になっていることについては?

 当社でもDCの受け取りは一時金がほとんどです。終身年金などの商品を受け皿として用意していますが、それが選択されることは、ほとんどありません。

 考えられる理由はいくつかありますが、ひとつは住宅ローンの残債精算などを目的に、退職所得控除額の範囲内で一時金を非課税で受け取りたいというニーズがあることでしょう。一時金をDB・DCどちらから受け取るか考えた場合、年金給付利率が高くて確定給付であるDBを年金で受け取り、一時金はDCから、という選択が自然だと思います。

 また、DCを年金受け取りにすると、受給期間中に口座維持手数料が毎年かかることも、一時金に流れる理由のひとつと考えられます。これらの状況から、一時金はDC、年金はDBで受け取ることが、それなりに合理的な選択となります。

 リタイア後の生活設計や資金計画は人それぞれですので、受給者一人ひとりが自分の計画に沿って一時金・年金を選択することが、現在のしくみの中では自然な姿と考えられます。

継続投資教育を現在の「配慮義務」から「努力義務」に位置づけを重くしようという流れになっていますが、この点については?

 当社では2013年4月の制度統合時に、全社員を対象にした継続投資教育を実施しました。これまでも退職給付制度の改正時には、新制度の説明に合わせて投資教育を実施してきています。

 今後は、DCの継続投資教育だけのために研修を開催するのではなく、例えば階層別・世代別にキャリアプラン・ライフプランを考えるセミナーの中に投資教育を組み込む形で、より効果的に実施していきたい、と考えています。

 なお、継続投資教育が努力義務化される方向性については違和感ありませんが、定期的な実施が求められることにより、研修そのものが形骸化しないよう留意する必要はあると思います。

DCの運用商品の除外規定を活用可能なものにし、一方で、運用商品の数に制限を設けてはどうかという議論についてはどう受け止めますか?

 除外規定によって商品の入れ替えが現実的な選択肢になることは、DCプラン運営上の柔軟性が高まりますので良いことであると受け止めています。ただし、除外の前提として議論されている、商品数の限定については慎重に検討されるべきと思います。商品数が多すぎると加入者が選択できないので減らそう、ということであれば、そのロジックには違和感を覚えます。加入者の商品選択のサポートは、商品数の限定ではなく、投資教育などの情報提供によって行われるべき、というのが筋だと思います。

 当社DCプランの商品ラインナップは、運用コストの低いパッシブファンドを中心に14種22本となっています。これぐらいの選択肢は必要と考えており、現時点では商品除外の必要性は感じていません。

デフォルト商品にターゲット・デート・ファンドなど分散投資効果が見込まれるファンドを設定するように促す方向になっていることについては?

 デフォルト商品についてはさほど重要視していません。当社プランも元本確保型商品をデフォルト設定していますが、商品選択せず、結果としてデフォルト商品が使われたケースはこれまでありませんでした。DC加入時に制度内容をしっかり伝えて理解してもらい、加入者自ら商品を選んでもらうよう心掛けています。その結果、当社DCプラン全体の資産配分は、3分の2がファンドという状況で、運用商品の割合が比較的高い構成となっています。

 ファンドの内容は、4資産のパッシブファンド、バランスファンド、また、アクティブファンドや、最近追加した新興国の株式や債券に投資するファンドなども選択されています。ですので、あえてデフォルト商品をターゲット・デート・ファンドなどの運用商品に設定する必要性は感じていません。

 一般論としては、リターンの低い元本確保型商品よりも、ある程度リスクがあってもリターンが期待できるターゲット・デート・ファンドなどをデフォルト商品に設定するよう促す趣旨は理解できます。

一方、議論の中では、より低廉な運営コストの実現や加入者サービスを拡充する目的で、運営管理機関を一定期間で見直す機会を設けてはどうかという議論もありました。この点については、いかがですか?

 運営管理機関の変更というのは大変な労力がかかりますし、加入者にとっても、運用商品の移し替えなど大変な負担をかけることになります。ですので運営管理機関を変更するのはよほどの事態であり、定期的に見直して頻繁に変更するものとは考えていません。

 当社の現在の運営管理機関は、適格年金時代からの長年のお付き合いを通じて、当社の制度内容や考え方をよく理解してくれています。このような信頼関係もやはり重要だと考えています。

 加入者利益の観点からは、運営管理機関のサービスレベルや加入者負担コストを事業主がきちんとチェックし、改善を求めるといった対応が、今のところは現実的だと思います。

その他、DC制度の発展のために、必要と感じる制度改定への希望はありますか?

 マッチング拠出については、現在、企業の拠出額が上限になっていますが、できればその制限は撤廃されることが望ましいと考えています。

 当社制度は、マッチング拠出の解禁後間もなく検討を始めたこともあり、社員が最大限マッチング拠出できるよう制度設計しました。先ほど標準モデルではDBが65%、DCが35%とお伝えしましたが、もしも全期間、最大限マッチング拠出すると、DC残高が倍になり、DB一時金を上回る規模まで年金資産を積み上げることが可能です。これは相当なインパクトだと思います。

 マッチング拠出は、会社が用意する退職給付に加え、社員自らが自助努力によりDC資産を大きく増やすことできる仕組みですので、重要な意義があると思います。ついては、マッチング拠出可能額を引き上げることにより、これまで以上に活用される制度になれば良いと思います。

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