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個人型確定拠出年金、DC法の改正案提出を受けて取扱い金融機関に動き=モーニングスターがDC手数料等を調査

2015-04-22

 個人型確定拠出年金(DC)の平均手数料は2015年4月現在で年間6,271円(新規掛金を拠出できる加入者ベース)になっている。この他、全ての加入者は新規加入時に、国民年金基金連合会(国基連)に対する初期費用2,777円が必要になる。運用商品の平均本数は約16本(うち元本確保型商品は2.5本)。モーニングスターが2015年4月1日現在で、個人型確定拠出年金を取り扱う銀行、証券、保険会社等の60機関の状況を調査した。

個人型DCの年間手数料の低下には事務手続きの簡素化が不可欠

 年間手数料には、国基連の掛金自動引き落としに係る共通手数料1,236円、および、資産を管理する信託銀行等への事務委託手数料768円が含まれる。このため、金融機関の実質的な手数料水準は平均で年4,267円(月に356円)になる。

 手数料については、スルガ銀行とSBI証券が実質的な手数料をゼロに設定している(国基連等への手数料の年間2,004円は必要)。

 個人型DCについては、今国会に提出された「確定拠出年金法の一部を改正する法律案」によって、今後、加入対象者の大幅な拡大が計画さ れている。専業主婦を中心とした第3号被保険者(約945万人)や公務員等の共済加入員(440万人)も新たに加入可能となる。また、企業型DCの加入者 であっても企業の掛金の水準によっては個人型DCへの加入が可能になるため、20歳以上の全国民に開かれた年金制度として重要な位置づけを担うことにな る。

個人型DC加入可能範囲の拡大
(改正確定拠出年金の成立を前提に2017年1月1日以降、法令が定める日から)

※1 企業型DCのみを実施する場合は、企業型DCへの事業主掛金の上限を年額42万円(月額3.5万円)とすることを規約で定めた場合に限り、個人型DCへの加入を認める。
※2 企業型DCと確定拠出年金を実施する場合は、企業型DCへの事業主掛け金の上限を年額18.6万円(月額1.55万円)とすることを規約で定めた場合に限り、個人型DCへの加入を認める。
出所:厚生労働省の資料に2014年3月末現在の加入者数を加筆

 この利用促進のため、DC運営に係る手数料の低減が求められている。今回の調査と同様な調査を2013年9月に実施した際には平均手数料は 6,187円だった。2014年4月の消費増税分(税率5%→8%)ほどには平均手数料が値上がりしていない。取扱い各社で加入者への負担を抑える努力を していることがうかがえる。

 また、現実問題として、加入時に加入資格審査があり、さらに、年1回のDC加入資格の確認も必要で、そのたびに関連書類の提出を求めら れる。「現状の手数料水準では、DCの運営管理で収益をあげることは難しい」(大手の運営管理機関)状況とされ、実際に地域金融機関の中には、大手の運営 管理機関と提携して受付け業務のみを受託している金融機関が少なくない。

 手数料水準の引き下げのためには、事務手続きの簡素化が不可欠だ。

公的年金の受給額の減額を補う“国民皆DC制度”

 一方、加入者にとっては、今回の法改正によって、加入対象が拡大し(転職や休職時にもDCによる運用が継続できる環境が拡充する)、かつ、手数料水準が一段と引き下げられることになれば、大きなメリットがある。

 もっとも、DC運用の結果責任は自分で負うことになる。また、個人型DC拡充の一方で、公的年金の給付水準が段階的に引き下げられてい く。公的年金は存続させることを前提に、保険料負担と年金給付のバランスをめざす段階に入っている。保険料負担の引き上げは2017年度で打ち止めが決定 し、年金給付の削減によるバランスを図っていくステージだ。

 2014年6月に示された公的年金財政検証によると所得代替率(受け取り始めるときの年金額が、その時点の現役世代の所得に対してどの程度の割合かを示す値)は、2014年度のモデル世帯で62.7%が、約30年後の2044年度に50%程度になる見通し。

平成26年財政検証の結果について

出所:厚生労働省

 今後の賃金や物価の推移を予測することが難しいため、実際の年金受給額を計算することは難しいが、現在のモデル世帯の年金受給額が月間21.8万 円と現役世帯平均月収(34.8万円)の約6割の水準で年金が受け取れるものが、30年後には現役世帯の収入の半額ほどしか受け取れないということにな る。「公的年金の受給額だけでは生活が厳しい」という生活実感は、現在よりもより強くなるだろう。

 このような公的年金制度の状況を踏まえ、今回の個人型DCの拡充策は、「今後の年金受給額の減額を、DCの積立による自助努力で補う」ことによって、国民の退職後の生計を安定させることが強く意識されている。

運用商品数は8本~33本とバラつき

 運用商品の平均は約16.5本で、企業型DCの22本と比較すると、やや少ない。2013年9月調査の平均15.3本から約1本増加した。16.6本の商品内訳は、元本確保型が平均2.5本で、ファンド等が14本。最大の品揃えが33本で、最少は8本だった。

 ファンド等の内訳は、ターゲットイヤー型を含むバランス型が4.7本となり、もっとも品揃えが手厚い。次に、日本株ファンドの3.4本。半面、REIT(不動産投信)など伝統的な4資産(国内外の株式と債券)以外に投資するファンドは採用していない場合が多い。

資産形成に関する知識の普及で利用拡大、啓発活動は業界を挙げて

 今後の個人型DC制度は、専業主婦や公務員にまで広く開かれた制度になる。制度の利用を広げていくためには、「資産形成」、「資産運用」についての知識を広めていくことが重要になる。

 単純に毎月2万円を30年間積み立てると720万円だが、年利3%(非課税)で複利運用すると約1,160万円になる。元本確保型以外 の商品で運用するメリットだ。しかも、一般の口座(20%課税)で積み立てた場合の約1,050万円と比較すると、非課税のDCのメリットがわかる。しか も、積み立てた掛け金は、税額控除の対象になるため、確定申告によって所得税の還付を受けることもできる。資産形成に関する知識が広まることによって、個 人型DCの利用は拡大するだろう。

 今回の確定拠出年金法の改正で、国民に対する「啓発活動及び広報活動を行う業務」は、国民年金基金連合会の新たな業務に位置付けられる ことになっている。しかし、啓発活動は、ひとり国基連だけではなく、DCに係る全国の金融機関が担っていくことが必要だろう。今回の法案の提出によって、 銀行等で個人型DCに関する情報提供の内容を拡充する動きも出始めた。今回提出の法案が成立しても、実際の法律の施行は2017年1月以降と今後2年間程 度が準備期間になる。息の長い取り組みが求められている。

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