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DB年金の資産運用、「リスク・オフ」が転換し「リスク・ニュートラル」の姿勢に

2015-06-30

 JPモルガン・アセット・マネジメントは2015年6月29日、「2014年度 年金運用動向調査結果」を発表した。日本の企業年金基金を対象に、2014年度から2015年度にかけての運用状況の変化および今後の方向性について聞き取り調査を実施したもので、2008年度以来毎年調査結果を発表し、今回は8回目の発表。確定給付企業年金(DB年金)および厚生年金基金から合計131機関の回答を分析した。今回の調査結果によって過去7回の調査では、予定利率の引き下げ等の「リスク・オフ」の姿勢が年々高まっていたが、国内株式削減の動きに下げ止まりの兆しがみられるなど、「リスク・ニュートラル」の姿勢に転換し始めていることが明らかになった。

 DB年金の運用においては、注目する市場環境として「日本国債の金利上昇」と「日本を含む先進国の超低金利」を同時に意識している。これは昨年の調査と同様の傾向で、政策アセットミックス(AM)において、国内債券への配分比率を減らし、外国債券(ヘッジ付き)、外国債券、オルタナティブ(代替投資)への配分率を高めている。


出所:JPモルガン・アセット・マネジメント「2014年度 年金運用動向調査結果」

 

 また、2014年度の運用実績(修正総合利回り)が平均で10.8%、過去5年平均でも7%程度とリーマンショック前、あるいは、ITバブル当時の水準に肩を並べるほどに高い水準になって、責任準備金を上回る剰余金が積み上がる状況になっている。この剰余金については、「別枠で管理し、キャッシュ/安定運用として将来的な母体企業への負担回避を図る分別運用を検討する先が見られた」(JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバル・マーケット・ストラテジスト國京彬氏)という。

 なお、責任準備金と同額に相当する積立金は、従来通り、予定利率を目標とする運用を継続し、不測の事態に陥った際にも現金部分の剰余金で年金資産が責任準備金以上に目減りすることを避けようという意図が読み取れると解説した。

 近年の株価上昇と、先進国の超低金利を背景に伝統的な4資産(国内外の株式・債券)には割高感を強く意識するDB年金が多く、また、ドメスティックバイアス削減(国内債券・国内株式の削減)を意識して、国内債券や国内株式への配分比率を減らし、代わりに「オルタナティブ」、「インカム運用資産」、「低流動性資産(不動産、プライベート・エクイティなど)」への投資を増やそうとしているところが多い。一部には昨今の市場環境の中で残高が積み上がってきた「ヘッジ付き外債」への投資について、米国利上げによるヘッジ・コスト上昇を見据え投資配分を減らすことを検討する先もある。

 一方、国内株式削減の動きは、過去7回は連続で低下していたものが、下げ止まりの兆しが見えた。特に資産規模500億円以上のDB年金では政策AMベースで2014年度の9.1%の配分比率が15年度は9.2%に向上。「これまでになかったトレンド」が現れた。小規模年金においても国内株式の削減幅が縮小していることもあり、今後、国内株式の配分率拡大は企業年金の運用に波及する可能性が高いと考えられている。

 また、今回から新たな調査対象としたオルタナティブ資産の内訳については、国内債券に代わる安定的な収益獲得源として「絶対収益型」への配分が多い。次いで、「内外REIT」、「実物不動産」、「インフラ」などインカム収益を主眼として資産への配分が多い。さらに、実績ベースでは「マルチ・アセット」が前年比3倍に拡大、高いリターンを追求する動きには「プレイベート・エクイティ(PE)」が受け皿になっている。

 オルタナティブ資産は、従来は“第5の資産"または“その他"に分類されていたが、現在のDB年金の運用では政策AMベースでは「国内債券」、「外国株式」に次ぐ3番目の資産配分先。オルタナティブ投資を実施しているDB年金に限ると、国内債券に次ぐ2番目に大きな配分先になっている。すでに、「絶対収益」、「マルチ・アセット」、「PE」、「REIT」、「保険関連」など様々な投資戦略が採用されているが、さらに今後、「プライベート・デット(海外中小企業への貸出し)」、「優先出資証券」、「パテント」、「日本モーゲージ」など別戦略の検討も始まっており、DB年金でのオルタナティブ投資資産の拡大が続く見通しだ。

 なお、DB年金のうち、予定利率引き下げを検討・決定している先は前年比で大幅に減少した。平均の予定利率は2014年度に2.55%に低下したが、15年度は2.58%になった。DB年金では、GPIFの運用方針の変更の影響は、ほとんど見られなかった。

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