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資産運用の有無が退職準備の格差を拡大、40・50代男性で顕著=フィデリティ投信がサラリーマン1万人調査を分析

2015-07-30

フィデリティ退職・投資教育研究所
所長
野尻 哲史氏

  現役の会社員の退職準備額は過去5年間で5割増だが、準備額0円層は依然として4割を占め、1000万円以上層が増加し、退職準備の格差が拡大。格差は「投資をしている人」と「投資をしていない人」の間で顕著に拡大――。フィデリティ投信のフィデリティ退職・投資教育研究所が2010年からほぼ毎年実施してきている「サラリーマン1万人調査」の過去4回分の回答結果を分析し、同研究所所長の野尻哲史氏が2015年7月29日に開催したメディア向け説明会で、「2010年と2015年を比較した結果、アベノミクス相場で退職準備に格差が広がっているという実態が浮かび上がった」と報告した。

 野尻氏が行った分析は、2010年2月を皮切りに、2013年4月、2015年5月に実施した「サラリーマン1万人アンケート」という大規模調査に加え、2014年3月~4月に実施した勤労者3万人アンケートから属性が等しいサラリーマン2万1000人を抽出した内容を加え、都合4回分のアンケートの回答に基づいて行われた。回答者の内訳は、20・30・40・50代がそれぞれ約25%ずつ、男女比はおおむね男性7割・女性3割。職業は会社員が約9割で、公務員が約1割という割合になっている。

■公的年金への「安心感」が向上

 過去5年間の回答を並べると、「公的年金は安心できるか」という質問に対し「とても安心できる」「まあまあ安心できる」という回答の合計が年々上昇。2010年は、この比率が6.6%に過ぎなかったものが、2015年には9.0%にまで高まった。反対に「不安だ」という回答は2010年の53.0%が2015年には50.9%に減少している。

 公的年金不安が話題になって久しく、2015年のアンケートでも「退職後の最も大きな心配事」として52.9%が「定年退職後の生活費が足りなくなること」を挙げているが、「景気が回復すれば運用で資産が増加すると思っているから」(2010年:29.2%→2015年:36.2%)などを背景に、わずかながらも公的年金への信頼感が回復していることが見てとれた。

■保有金融資産は5年で2割増、退職準備額は約5割増

 過去5年間の平均保有金融資産は、2010年に861.3万円だったものが、2015年には1049.3万円と21.8%増加した。その中で、平均退職準備額は2010年に515.6万円が、2015年に748.5万円と45.2%増。野尻氏は、「保有金融資産、退職準備額が増えたのは、所得が増えていることと、日本株の上昇などによって保有資産の評価額が増えたことが要因と考えられ、40代~50代の資産の伸びが大きくなった」と分析した。

 一方で、「退職準備に格差が広がっている」(野尻氏)と指摘。退職準備額が「0円」と回答した比率は、2010年44.3%、2013年40.3%、2014年40.8%、2015年40.8%と、ほぼ40%程度で横ばいであるが、「1000万円以上」の比率は2010年13.3%から右肩上がりで2015年には20.1%になった。退職準備ができない人はできないままであるが、1000万円以上準備できる人が年々増えている状況だ。

■退職準備の格差拡大は40代、50代に顕著

 この格差については、「2010年比で2015年に所得が向上した20代、30代は全体的に底上げの傾向にあるものの、所得が低下した40代、50代の男性で格差が拡大している」という。

 たとえば、30代男性は、年収平均が2010年に476.6万円から2015年に488.3万円に増加。退職準備「0円」は51.3%から44.3%に低下している。一方、50代男性の年収は712.4万円から702.1万円に減少し、退職準備「0円」の比率は27.7%から30.2%に高まった。40代、50代では退職準備が1000万円以上の層が増大するものの、「0円」層も増加するという傾向があり、格差拡大が目立っている。

■「投資をしている人」と「投資をしていない人」の格差は2倍超

 また、保有金融資産や退職準備額について、「投資をしている人」と「投資をしていない人」の間でも大きな格差が出ている。「投資をしている人」は平均年収602.7万円で、平均保有金融資産1651.4万円、退職準備額1320.3万円。「投資をしていない人」は年収425.6万円、保有金融資産721.8万円、退職準備額498.5万円。資産格差は、保有金融資産で2.29倍、退職準備額で2.65倍になった。

 この格差は、年々拡大し、退職準備額の年収倍率を「投資をしている人」と「投資をしていない人」で比較すると2010年は年収の0.65倍の差だったものが、2015年は1.02倍に広がっている。

■投資をしている人の比率は低下、「長期投資」「分散投資」に疑問も

 半面で、「投資をしている人」の割合は、過去5年間で傾向的に減少。2010年に34.0%だったが、2015年には30.4%に低下した。この結果について野尻氏は、「株価が上昇していることで、投資に慎重になっている」と分析。「退職者8000人にアンケートをとった結果でも退職者の大半が退職金を受け取って6カ月以内に投資している。つまり、まとまった資金が入る以前から市場を見て投資対象を選んでいる。ここ数年は、株高の基調が続いているため、ボーナスや退職金などまとまった資金が入ったタイミングでは、投資を考えていた時よりも株価が高くなってしまい、投資に二の足をふんでいるのではないか」と考察していた。

 ただ、投資理論の有効とみる人の割合を2010年と2015年で比較すると、「分散投資」については男女で全ての年代で有効とみる比率が低下(平均は46.5%→40.6%)。また、「長期投資」についても平均が40.7%から38.1%になり、懐疑的に感じる人が増えているという結果になった。この中で、「時間分散」については、24.0%が25.3%に向上し、理解度の上昇がみられた。

 最後に、「投資」そのものに対するイメージを聞いた内容について触れ、「投資のイメージもポジティブ派とネガティブ派に二極化している」と紹介した。「明るい」「儲け」「楽しい」「前向き」などポジティブな印象を持つ人は、2010年(合計で22.8%)から2015年(26.9%)にかけて年々上昇。反対に、「怖い」「損失」「ギャンブル」というネガティブな印象を持っている人も26.3%から35.5%に拡大。中立的なイメージである「リスク」というイメージのみが低下(50.8%→37.7%)し、良いイメージと悪いイメージがそれぞれ増加するということになっている。

 これに対しては、「投資の目的が、『老後の資産形成』が35.3%とトップであるものの、『おこづかいが欲しい』10.2%、『ひと儲けしたい』7.0%などという投機的な目的で投資に臨む人も一定数いる。特に、20代、30代の投資商品に外国為替証拠金取引(FX)の比率が比較的高く、“投資"に対するイメージの格差につながっているのではないか」と語っていた。

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