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武田薬品、マッチング拠出利用率が約6割、ファンド運用比率75%を実現した継続投資教育

2015-10-27

武田薬品
コンペンセーション
&ベネフィッツ(日本)ヘッド
小川寛六氏

 武田薬品は2014年1月に導入したマッチング拠出について、確定拠出年金(DC年金)加入者の約6割が活用するなど、全社的にDC年金制度が活発に利用されている。同社グローバルHR コンペンセーション&ベネフィッツ(日本)ヘッドの小川寛六氏はマッチング拠出の導入に合わせて実施した継続投資教育について、「各自のライフプランに合わせて早期から老後資金の準備を行う必要性、DC年金の魅力である3つの税制メリット、社員自身が運用の主役であり、投資家であること、の3点を強調したことで、DC年金に対する社員の理解がさらに高まった」と、投資教育の効果を強調した。

 また、「トータル・コンペンセーションを増やすという観点から会社のキャッシュアウトを極力抑えつつ、会社として用意できる財産形成支援策や情報提供を充実させ、DC年金を含む社内制度を効果的に利用してもらう環境を整えていきたい」と、DC年金を社員に対する報酬の一部と位置づけたうえで、「報酬体系全体の中でDCを戦略的に活用していく」と語った。

2014年にマッチング拠出を導入されたところ、マッチング拠出の利用率が6割弱と、全国平均が2割といわれるマッチング拠出の利用率を大きく上回っています。これほど高いマッチング拠出の利用率になった理由は? 日頃から従業員の方々は確定拠出年金制度への関心が高いのでしょうか?

 当社では2007年4月に利率変動型確定給付企業年金(キャッシュバランスプラン:CB年金)、および、確定拠出年金(DC)を柱にした現在の企業年金制度に移行しました。その際、DC部分は、前払い退職金との選択制にしましたが、DCの選択率は9割を超えていました。ただ、運営管理機関が提供するDC専用Webへのアクセス数は、他社と比較して特に多いわけではないと聞いていましたので、DCに対する社員の関心が他社と比べて特別高いとは言えなかったと思います。

マッチング拠出導入時の継続投資教育(社内セミナー)では、どのような点を強調したのですか?

 社内セミナーで強調した内容は、主に3点あります。

 第1は、アベノミクスをはじめとする経済政策によって、資産形成を行う環境がデフレ環境下と比べて明らかに変わったこと。第2は、各自のマネープランやライフイベントに合わせて、老後資金の準備は早い段階から計画的に行うことが重要であること。第3は、マッチング拠出を含め、DC年金で享受できる税制メリットとその具体的な活用方法、です。

 当時、政府・日本銀行がインフレターゲットとして物価上昇率2%を目指すと公言し、従来とは異なる経済・金融政策の舵取りを始めていました。そうした環境下では、定年退職の近い社員は別としても、漫然と銀行の給料口座にお金を預けて資産形成(貯蓄)を行うより、拠出時・運用時・受取時に税制メリットのあるDC年金、特にマッチング拠出を利用した資産形成を行う方が資産形成という観点では一般的に有利であることを伝えました。

 マッチング拠出を導入するタイミングでセミナーを実施しましたので、今すぐにでも取り組める節税策としてセミナー受講者に強く響いたと思います。

今回のセミナーを通じて、若い世代の社員の方々もDC年金の活用に前向きになったということですが、どのような工夫をしたのですか?

 若年層は年金を遠い将来のことで今は関係ないと思って関心が低かったり、年金制度の理解そのものが難しいと感じたりする人が多いと聞いていました。そこで、老後資金のための資産形成はできるだけ若い段階から開始することこそが重要であることを強調しました。

 また、運用リスクをとって長期投資を行うことが一般的に望ましいとされる若年層の方が元本確保型商品を選択して保守的な運用を行っている特徴がありました。社員が家計の金融資産全体のポートフォリオを考えたうえで、意図的に元本確保型商品を選択しているのであれば話は別ですが、そうでない場合、若い世代が運用利回り0%という状態で長期運用を継続すれば、将来のインフレリスクに備えたり、会社の想定利回りを達成したりすることは難しい点も伝えました。

 一方、社員にとってメリットのある制度(マッチング拠出)を新しく導入しても、活用されなければ意味は無いので、制度の内容や会社側の意図を正確に理解してもらうため、できるだけ多くの社員にセミナーに参加いただくことが重要だと考えていました。セミナーの案内は、職場のラインを通じて参加の依頼を行い、労働組合の協力も得ながらセミナーの参加依頼を行いました。

 その結果、基本的には自主参加ですが、約60%(約4,000人)の社員がセミナー(営業職を対象としたTV会議等を含む)に参加しました。セミナーに参加すれば、DC年金やマッチング拠出のメリットをより深く理解してもらえると確信していたので、参加者の大半がマッチング拠出に申し込むのではないかという算段もありました。

 また、セミナーの最初と最後は会社(人事担当)から社員にセミナーの企画意図や資産形成の意義・必要性を丁寧に説明しました。また、外部講師(ファイナンシャル・プランナー)の担当部分についても、事前に当社が置かれている状況や社員に強調してほしい内容をお伝えしたりする等、密な連携を行っていました。

今後の取り組みは?

 DCの継続教育については、社員のトータル・コンペンセーションを増やすという観点から、ライフステージに応じたマネープランを考えてもらい、DC年金を財形貯蓄や従業員持株会等の法定外福利と絡めて効果的に活用してもらえるように有益な情報発信を行う場にしたいと思います。また、継続投資教育の実施時期は、数年に1回を予定していますが、何らかの制度や運用方法の改正、経済情勢の趨勢を見据えて実施することが効果的だと考えています。

 一方、当社のDC年金は資産残高ベースで75%が投資信託(ファンド)で運用されています。ここ1~2年間の経済環境では、ファンドによる運用比率が高いことでDC制度全体の平均運用利回りを引き上げるプラス効果がありました。ただ、米国の利上げや中国経済の変調などをきっかけに、大きな調整が起こる可能性も指摘されています。ファンドによる運用比率が高いことが、マイナスに働く局面も今後想定しなければならないと考えています。

 DC年金は中長期での運用が基本ですから日々の株価に一喜一憂する必要はないと思いますが、定年退職が近い世代のことも考慮し、世界の市場が変調をきたしそうな場合に、その注意喚起を会社としてどのように行うべきか、どこまで会社が関与すべきかを考えなければならないと思います。現在、希望者には運営管理機関から、経済や運用環境等に関する有益な情報がメールで配信されるようになっていますが、より多くの加入者に分かりやすく伝えていくためにはどのような工夫ができるかを考えていきたいと思っています。

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