DCニュース

 

第31回年金部会、短時間労働者へ被用者保険の適用拡大とGPIFガバナンスを議論

2015-12-09

年金部会(第31回)の様子

 社会保障審議会年金部会(第31回)が12月8日、東京・霞が関で開催された。1月21日に議論の整理を行い、同23日にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)のガバナンスの在り方について議論を行って以来、約10カ月ぶりの開催になった。この間、厚生労働省年金局の体制が異動によって一部変更となり、年金部会のメンバーも一部変更があった。年金受給世帯の生活苦が社会問題となり、昨年秋に年金資金運用の基本ポートフォリオを大幅に変更したGPIFの運用状況を懸念する報道が話題になるなど、「年金」を巡る社会的な関心が高まる中、「スピード感を持った制度改革の実施」へ向け、「議論可能な場を最大限に活かし、議論を尽くしていきたい」(部会長の神野直彦・東京大学名誉教授)と議論が再開された。

 まず、年金部会における「議論の整理」に基づいて7つの検討課題が示された。(1)短時間労働者に対する被用者保険(年金・医療)の適用拡大、(2)高齢者の就労と年金受給の在り方、(3)年金額改定(スライド)の在り方、(4)高所得者の年金受給の在り方・年金制度における世代内の再分配機能の強化、(5)働き方に中立的な社会保障制度、(6)第1号被保険者の産前産後期間の保険料の取扱い、(7)遺族年金制度の在り方――。

 これまでの議論を通じて(1)短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大は、2016年10月以降に従業員501人以上の企業で週20時間以上就業する従業員への適用拡大されることになっていることに加え、「規模が500人以下の企業にも適用拡大を進めることが必要」との方向性で一致。また、(3)年金額改定(スライド)の在り方は、「将来世代の給付水準確保を図ることが必要」という方針で一致。さらに、(6)第1号被保険者の産前産後期間の保険料の取扱いは、「次世代育成支援の観点から配慮が必要」との方向性が示されている。

 委員の間からは、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大については、「“不本意非正規”でやむを得ず短時間労働を行っている人には将来の生活に不安を感じている人が少なくない。企業規模に関わらず被用者保険が適用される環境をつくっていくべき」という意見が多く出された。これに対し、厚労省からは「500人以下の企業についても労使合意に基づく適用拡大が可能となるよう、『選択的適用拡大』の途を開きたい」という方針が示された。また、2016年10月からキャリアアップ助成金を活用し、短時間労働者の賃金引き上げや、本人の希望を踏まえて労働時間延長を行った事業主に対して、1事業所あたり最大600万円の助成が行われる短時間労働者の就業促進対策が説明され、「被用者保険適用で保険料負担が生じても、手取り収入が減額されない措置としたい」とした。

 また、年金額改定(スライド)については、「年金は現役世代の保険料により支えられており、負担能力に応じた給付としていくことが適切」との考え方に基づき、賃金変動が物価変動を下回る場合(賃金の変動が物価変動にマイナスとなる場合)、下落幅が大きな賃金に合わせて年金額を減額する改定ルールを徹底し「将来世代の給付水準の確保」に努めたいとした。

 さらに、国民年金第1号被保険者の産前産後期間の保険料免除については、厚生年金が厚生年金全体で産休免除期間の保険料を負担している実情に合わせ、国民年金においても産前産後期間の保険料は法定免除とし、必要な財源については国民年金の被保険者全体に、追加の保険料(月額100円程度)を求めて制度全体で支える方向で検討したいという考え方が示された。

 一方、GPIF関係については、約135兆円の年金を運用している世界最大規模の年金資金運用機関として、適切なガバナンス・運用の在り方について、更に改革を進めていくことが必要との認識に基づき、(1)合議制機関の在り方、(2)合議制機関と執行機関の関わり方、(3)厚生労働大臣の責任・役割――について、ガバナンスの在り方を検討していくこと。また、運用の在り方については、(1)株式等のインハウス運用(パッシブ/アクティブ)、(2)オルタナティブ資産(インフラストラクチャー、プライベートエクイティ、不動産等)への直接投資――についての運用のルールづくりについて検討したいとされた。

 GPIFのガバナンスについては、現状が理事長(厚生労働大臣による任命)による独任制になっているところを、複数の者による合議による意思決定をする機関に改めること。また、意思決定・監督と業務執行の分離(合議制機関が執行部を監督)という方向性では一致をみているものの、具体的なガバナンス体制の在り方で意見がまとまっていない。

 たとえば、合議制機関のメンバーの選任方法や、メンバーに求める専門性についての要件。そして、資金の拠出者である国民の意向を、合議制機関の意思決定にどのように反映させていくのか議論を深める必要があるとしている。委員の間からは、「国民は年金資金の出し手であり、かつ、運用の結果で年金の受給額が左右されるため、GPIFの運用には強い利害関係がある。GPIFの在り方に国民の意見を反映させることは必須だ」という強い意見がある。一方、高度化、複雑化が進む運用の世界を正しく理解し、より効率的な運用実現のために専門家でない者が加わることには慎重であるべきだとの意見もある。

 さらに、海外の大規模な公的年金基金で進む「インハウス運用」において、GPIFが株式のインハウス運用を行う場合、議決権の行使をどのように行うかなど運用の在り方を巡る議論も今後深めていく方向だ。

バックナンバー

2014 | 2015 | 2016 | 2017