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モーニングスターDCセミナー、DC新時代への対応を多様な切り口で

2016-01-25

モーニングスターDCセミナーの様子

 モーニングスターは1月15日、東京・丸の内で「確定拠出年金法改正への対応」をテーマにしたセミナーを開催した。基調講演に元金融担当大臣の中塚一宏氏が講演し、オフィス・リベルタス代表の大江英樹氏が企業型確定拠出年金の現状と課題、そして、モーニングスター代表取締役社長の朝倉智也がDC新時代に向けた具体的な対応策について語った。首都圏のDC導入する40社を超える企業からDC担当者が参加し、近年のDCを取り巻く環境変化と、今後の対応について熱心に聴講した。

公的年金は「不確定拠出・不確定給付」、企業型DCやDBの役割は重み増す

 中塚氏は、日本の社会保障制度(年金・医療・介護)の中で、「公的年金」について多くの国民が「今より悪くなる」と感じているという調査結果から話を起こし、公的年金の現状と制度を維持することの厳しさについて語った。「医療や介護は必ずしも必要ではなく、かつ、サービスとして提供を受けるものだが、年金については誰でも必ず必要とするもので、しかも、現金として給付されるのという点が他の社会保障と決定的に違う」とした。そして、「将来の貯えについては、いくつになっても不安があるもの」と国民の多くが公的年金の将来に不安を感じていることは理解できると語った。

 ただ、「10年ほど前に社会保障制度の議論をする時には『高齢化のピーク』が前提になっていたが、実際にはピークがなかなかやって来ない。現在2060年までの推計では高齢化がピークアウトしないとされている」という「すさまじい高齢化」に加え、人口減少社会を迎えて「社会保障費用は、国の予想を超えてどんどん積み上がっていく方向にある」。「医療保険は既に本人負担が30%となり社会保障制度として限度といえる水準のため、費用の削減は限定的。公的年金は、高齢化の進展と担い手の減少から、制度を維持するためには、給付の引き下げと保険料負担の引き上げをずっと続けていかなければならないのが現実。2017年で年金保険料の引き上げをストップするが、そこで本当に終わるのか」と疑問を呈した。

 また、「国の計画では、所得代替率が50%を維持できる制度を維持したいという意向があるが、世界の制度と比較すると、現在の日本の所得代替率は35.6%という試算もある。そのように考えると、現役世代の公的年金の保険料負担と年金給付額の関係は、政府が示す1.5倍(国民年金)や2.3倍(厚生年金)よりも、ずっと低い比率になるのではないか。公的年金が『不確定拠出・不確定給付』という不安を抱えるだけに、企業年金の確定給付型(DB)、そして、確定拠出型(DC)の重みは増していく」と語った。

継続教育で重要な「加入者教育」の視点、投資教育よりライフプラン教育

 大江氏は、企業型DCの担当者が感じている制度運営上の課題・悩みについてのアンケートを読み解きながら、「担当者の50%が『社員のDC制度への理解・関心が低い』、『投資・運用に対する理解・関心が低い』と感じているが、『継続教育への反応、参加率の低さ』を課題と感じている担当者は14%に過ぎず、85%超の担当者は継続教育について社員の関心や反応は良いと感じているように取れる。退職給付制度のひとつとして始まったDC制度が、米国401kと同様に自立・自助の制度として根付き始めている傾向が見て取れる」と分析した。

 また、「DCを退職給付制度の一環として考えると、想定利回りを上回る運用の教育が必要という認識になるが、DC導入後に入社した社員が増えていくに従って、想定利回りの議論よりも、DCを活用しながら老後のための資産形成に計画的に取り組んでいくという発想が重要になる。DC制度では2013年3月の法令解釈通知の見直しで継続教育に『老後の生活設計』という項目が加えられたが、本来であれば、DCを通じて老後の生活設計を考えるということはもっとも大事なこと。継続教育は『加入者のための教育』が重要であって『投資教育』を強調すべきでない」と持論を披露した。

 そして、今後の展望として「DCは加入者の将来がかかっているという認識にのっとったガバナンスの強化、ライフプラン教育の重要性の拡大、そして、制度改定を踏まえたよりフレキシブルな制度構築がテーマ」と、新しいDC法に備えた対応を進めたいと語った。

DC新時代に求められるラインナップ分析とワン・ツー・ワン教育の仕組み

 「DC新時代に備えた最適な運用商品と投資教育とは」をテーマに講演した朝倉は、日米の年金ポートフォリオやDCポートフォリオの現状から語り起こし、「年初から世界の株価が大きく下落している今こそ、積極的な情報提供を実施すべき」と時宜を得た情報提供の重要性に触れた。そして、日本のDC運用ポートフォリオは、預貯金が38%超、保険が20%超を占めて約60%が元本確保型が占めることに触れ、「中途引出しができないDCに日本では現金比率が高過ぎる。米国では現金は4%程度で、ほとんどが株式ファンドやバランスファンドで運用されている」と語った。

 ただ、現状の運用環境は大変難しい時代を迎えていると語り、「日米欧の10年国債利回りは10年前と比較して大きく低下した。日本では0.2%をも下回るほどに利回りが低下しているが、欧米でも5~6%だった利回りが2%程度に低下し、国債に投資して十分なリターンを得ることが難しい。しかも、これほど金利が低くなると、株式と債券への分散投資によるリスクヘッジが利きにくくなる。一方、国内外株式の連動性が高まり、市場の変動率も高まるなど、資産運用が大変難しい時代になっている」と現状を分析。

 それだけに、分散投資の効果が得られるような幅広い資産に投資を可能とするファンドラインナップを、企業側の担当者が見極めて揃えることが重要になると語った。「国内外の様々な資産クラスに投資が可能なラインナップをめざし、中立的客観的な評価機関の情報も活かして、ラインナップでホワイトスペース(抜け落ち)を作らないなどの対応が重要」とアドバイスした。

 たとえば、具体的なファンドラインナップの考え方の事例として、日本株の「インデックスファンド」と国内中小型株アクティブファンドの運用実績を比較して紹介した。日本株の代表インデックスであるTOPIX(東証株価指数)は2015年末で過去10年間に年率1.12%のリターンになっている。これに対し、中小型株に特化したアクティブファンドの中には、過去10年間で年率5%を超える運用実績を残しているファンドがいくつか存在する。個別銘柄をリサーチして選別投資するために得られる運用実績で、それは組み入れ上位銘柄の内容にも明確な違いとなって表れている。「このように個々のファンドの運用内容に踏み込んで比較検討することによって、ラインナップを充実させることが可能になる」と、ファンドラインナップの考え方について語った。

 そして、これからの投資教育は、「一人ひとりの従業員にカスタマイズしたワン・ツー・ワンの教育に進む。投資経験や年齢、リスク許容度は、人それぞれなので、ひとつのテキストを全員が使うような勉強会では従業員のニーズに応えられない」と指摘。スマートフォンアプリなどを活用した、いつでもどこでもできるオーダーメイド型の情報発信が求められているとして、モーニングスターが提供しているロボ・アドバイザーやシミュレーションツールなどを紹介した。さらに、加入者が一番知りたい「自分にとっての最適な商品」など具体的な行動指針についても、投資顧問契約に基づく投資助言サービスで応えていくことができるサービス、あるいは、DCを含めてNISA口座やその他の口座を一元的に管理するサービスなど、様々なサポートサービスがあると新時代のサポートツールについて紹介した。

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