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NISA成功体験をDCに応用、DCで投資知識普及のすそ野拡大にも期待=日本証券業協会

2016-06-29
日本証券業協会
政策本部
共同本部長
石黒淳史氏

 確定拠出年金(DC)法の改正案が成立し、2017年1月からは個人型DC制度で加入対象範囲が大幅に広がる。従来は加入資格のなかった第3号被保険者や公務員も加入できるようになる。多くの国民にDC制度を使って老後の資産を積み立ててほしいという改正法の趣旨を受け、DC制度の関連機関は改正法への対応に力を入れている。日本証券業協会は、NISA(少額投資非課税制度)の普及で大きな力を発揮した。DCについては、どのような役割を担っていくのか、同協会の政策本部 共同本部長の石黒淳史氏に聞いた。

確定拠出年金法の改正法の施行に向けて要望事項は?

 日証協は確定拠出年金法の改正にあたって、昨年から2度にわたって要望書を提出しています。要望として挙げているのは主に次の3点です。

 第1は、いわゆる「デフォルト商品」の規定を設けるにあたって、長期的な観点で、今後のインフレリスクに備えることを意識した商品になるよう基準を設けていただきたいということ。具体的には、加入者が特に意図しなくても、さまざまな国や資産クラスに分散投資ができる商品が、デフォルト商品として選ばれるような基準が相応しいと考えています。また、インフレリスクに備えるという観点からは、いわゆる元本確保型商品はデフォルト商品として適当でないと考えています。

 第2に、「運用商品本数の制限」について慎重な議論をしてほしいと要望しています。これまでの社会保障審議会の議論では、「運用商品の数が多過ぎると、加入者が選ぶことができない」という趣旨の議論があったと理解しています。ただ、制限を設けることによって既存の加入者が不利益にならないような配慮が必要だと考えています。また、個人型DCは、多様なニーズを持つ加入者を対象とするため、運用商品についても多様性が求められることへの配慮も必要です。そして、本数の数え方についても現実に即して実施すべきだと思います。たとえば、「ターゲット・イヤー・ファンド」などは、「2030」、「2040」、「2050」など、ターゲットとする年限によって複数本がセットになっています。これらはひとつの選択肢として、まとめて1本にカウントするなど、極端に選択肢が少なくならないような工夫が必要だと思います。

 第3は、金融機関が実際の店舗で取り扱いができるように、規定を見直してほしいと要望しています。現在のルールでは、加入者向けのサービスは「専門の担当者」が行うと規定され、営業担当者は関わってはならないことになっています。現実問題として、各店舗に確定拠出年金の専門担当者を配置することは難しいといえます。一定のルールを設けた上で、営業担当もDCについて、他の金融商品・サービスと同等に取り扱える環境を作ってほしいと思っています。加入者の方々が必要に応じて店頭で相談ができる体制こそが、普及と発展には望ましいと思います。

 「デフォルト商品」と「運用商品本数の制限」については、社会保障審議会企業年金部会に専門委員会を設けて議論をしていくということなので、専門委員会には是非、マーケット(金融市場)に詳しい方もメンバーに入れていただき、世界の金融市場の近年の動きを踏まえた判断をお願いしたいと思います。日証協としても、専門委員会等で意見を発表する機会があれば、引き続き、証券界としての考えを主張していきたいと考えています。

厚労省では「DC普及・推進協議会」を設立し、関係機関の協力を得て普及に努める考えです。日証協は、NISAの普及においては主導的な立場で、金融界の連携による制度普及を進める上で、大きな力になりました。今回のDC普及への取り組みは?

 DCの普及に必要であれば、NISAで行った様々な取り組みのノウハウについて「DC普及・推進協議会」で活用してもらえればと考えています。DC普及について、NISAでの成功事例も参考に、愛称やロゴの作成など、様々なプロモーションが計画されていますが、これらの施策がスムーズに進行するよう協力していきます。また、NISAでは取扱いに関するガイドラインを作りましたが、DCでも同様の取り組みをする場合には、そのサポートもできると思います。

 「DC普及・推進協議会」は、国民年金基金連合会や金融機関、関係省庁に加え民間団体や利用者代表などで構成されますが、個人型DCの普及に向け、幅広い関係者が一致協力できる組織として機能することを期待しています。

DC法の改正によって、今後に成長が見込まれるDC制度に期待していることは?

 めざすところは、米国の「401k」や「IRA」のように、日本においても、より多くの方々が利用する制度として大きく育つことです。加入者の方々は、運用時の運用収益が非課税となる他、掛金が所得控除の対象となるなど、手厚い税制優遇のある制度だけに、上手に使っていただきたいと思います。

 また、大事な側面として投資知識の普及の面で期待しています。今回の改正で公務員の方々が個人型DCに加入できるようになりますが、たとえば、小中学校の教員の方々がDCを通じて資産運用を始めると、投資経験を自ら積み重ねることになります。投資を体験することによって、教員の方々の金融資本市場に対する理解が進み、教育現場における金融経済教育にもプラスに働くことを期待しています。

 個人型DCは、財形貯蓄と同様、給与天引きでの掛金の引き落としの方法による職域を通じた普及が進むと予想しています。マイナス金利時代となって固定利回り商品の魅力が相対的に低くなるなか、税制優遇のある投資非課税口座としてDCにメリットを感じる個人は少なくないと考えられます。企業や官公庁が社員・職員の個人型DCの申し込みをまとめて申請する制度、あるいは、個人型DCに企業がマッチング拠出する制度の普及など、企業・団体による取り組みが広がっていくことも重要であると考えています。

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