DCニュース

 

若年層を資産運用に導くアプローチ、フィデリティDCセミナーで日米の視点から考察

2016-10-19
フィデリティ投信
代表取締役社長
チャック・マッケンジー氏

 フィデリティ投信は10月18日、東京で企業型DC担当者を対象とした「フィデリティ DCセミナー 2016」を開催した。テーマは「日米の専門家がみる、若年層を資産運用に導くアプローチ」。企業型DCにおいて継続投資教育が、企業の「配慮義務」から「努力義務」に引上げられ、DC導入企業では従業員向けの金融教育のプログラムの見直し等が進んでいる。「若年層のDCへの関心が低く、元本確保型商品で運用したまま放置しているケースが多い」というのは、ほとんどの企業に共通の悩み。デフォルト商品(運用指定をしない場合の選択先)を運用商品に指定し、強制的に運用させることも検討されているが、望ましいのは、本人の意思で運用商品を選択すること。そのためには、DC制度の趣旨や内容について関心を持って、その内容を理解してもらう必要がある。セミナーでは、「20代、30代をいかにして振り向かせるか」について、様々なアイデアが紹介された。

 フィデリティ投信代表取締役社長のチャック・マッケンジー氏は、「電通若者研究部(ワカモン)研究員の奈木れい氏、そして、フィデリティ・インベストメンツ シニア・バイス・プレジデント エマージング・インベスターズのクリステン・ロビンソンを講師に迎え、日米の20代へのアプローチのアイデアを紹介する。個人型DC(iDeCo)に誰でも加入できる時代を迎え、DCへの関心が高まっている。DCが投資をするきっかけにもなり、企業における若年層への対応は、重要なテーマのひとつ」と語った。

■日本の若者に「投資」についてポジティブなイメージを伝える必要性

 ワカモンの奈木氏は、若年層を理解する上で、「3つの大きな波にさらされたという彼らが育ってきた時代を理解するすることが大事」とした。(1)不況生まれ、デフレ育ちで、身の回りには、「安かろう悪かろう」ばかりでなく、「安くてもいいもの」、「無料でもいいもの」など様々な消費の選択肢があり、その中から自分に手応えのあるものを選ぶ『身の丈志向』が強い。(2)人口減少社会で競争が不要となる中、『協調』を重視する教育で育った。(3)コミュニケーション大洪水の時代となり、他人から自分がどう見られているかが気になり、失敗したくないという『正解志向』が強い。

 そして、若者へのアプローチのポイントとして、「純粋な私(本音)」、「内輪での私(SNSなどでつながっている人たち)」、「世の中での私」という3つの評価軸で考えると分かりやすいと解説。たとえば、「投資」についての若者の捉え方は、(1)純粋な私としては、将来お金に困る生活をしたくないので学ぶことは良いことだ、(2)内輪での私としては、投資していることを周りはどう見るのか不安、友だちに投資しているといえるだろうかわからない、(3)世の中の私としては、20代、30代で投資している人をほとんど知らない――となり、「『投資』のイメージがないことが、興味を持たない要因になっている」とした。

 このため、「たとえば、『投資をしている人=未来を考えている人』といったポジティブなイメージで投資していることを広げるような、ブランディングが重要」と課題をあげていた。

■米ミレニアル世代、親子でシェアする金融プログラムが奏功

 一方、フィデリティ・インベストメンツのロビンソン氏は、米国のミレニアル世代(現在18歳~35歳までの世代)に浸透しつつあるフィデリティの取り組みについて紹介した。「ミレニアル世代は、ベビーブーマー世代に次いで人口の多い年齢層で約7900万人いる。大学卒業時に約3万ドルの学資ローンを抱えるなど、同世代の41%が債務を持ち、その返済に苦しんでいる。ただ、今後数十年の間に同世代の相続資産は30兆ドルに達し、将来のためにもファイナンスの基礎を学ぶ必要がある」と、米国の若者像を紹介。

 フィデリティでは、大学生向けなどミレニアル世代に重点を置いた教育プログラムの提供やスマートフォン・アプリの開発など、様々な取り組みを事例をあげて紹介した。その中で、「ファミリー・シェアリング・プログラム」が、家族や友人を通じたつながりの中で、自然と学習をはじめるきっかけとして広がっているという。このプログラムは、家族や友人が、身近な人に対して、フィデリティが用意している様々な学習プログラムの中で、その人に相応しい・学んでほしいと思う学習コースを選択し、電子メールで学習キットを送るというもの。特に、親から子に対する紹介が効果的だという。「調査によると、誰からの助言を信頼する? という問いに対し、『両親』という回答が最も多く、『ファミリー・シェアリング・プログラム』が受け入れられた背景だろう」とした。

 そして、職場を通じた従業員向けの金融教育の提供は増加する傾向にあり、フィデリティ・インベストメンツは2016年4月に、企業向けの「ファイナンシャル・ウェルネス・プログラム」の提供を開始した。基礎・初級者向け・資産形成層向けという3つのコースを設け、企業から従業員に対してメールを送ることによって、金融教育のコンテンツを提供する形で、若い世代にも利用が広がっているという。

■若年層の行動様式は様々、パーソナル化したアプローチが重要

 セミナーの最後は、フィデリティ退職・投資教育研究所 所長の野尻哲史氏がモデレーターを務め、奈木氏とロビンソン氏とのパネルディスカッションを実施。奈木氏は、「米国で親から子に伝える形で情報が広がっているという事例は興味深かった。日本でも、親子で旅行や買い物をするなど、若年層と親との関係が近しくなってきている」と、「ファミリー・シェアリング・プログラム」は日本でも有効ではという示唆があった。

 また、ロビンソン氏は、「ミレニアル層へのアプローチは、シンプルであること、そして、いつでもどこでもアクセス可能であること、さらに、パーソナル化されていることが重要。また、お金に関心が向くポイントは、就業や結婚、転職など何らかのライフイベントが起きたタイミング。そのタイミングで、印象深いアドバイスができると次につながる」など、若年層向けのアプローチのポイントを語っていた。

(左から)野尻哲史氏、奈木れい氏、クリステン・ロビンソン氏

バックナンバー

2014 | 2015 | 2016 | 2017